わたしを知るもの好きがたり

「わたしを知る」をテーマに自由に書いています。

吹奏楽とホットケーキ

昼過ぎ。家へ急ぎ帰る途中、遠くから金管楽器の音が響いてきた。
だんだん大きくなる。音数が増えてゆく。
「?!」荷物も重いし遠回りになるが、気になって音の方向へ行ってみることにした。
久々の生の楽器の音だ。

集合住宅の立ち並ぶ一角の、広場のような公園。地元高校の吹奏楽部による青空コンサートらしい。音合わせの最中だった。椅子が並べられ、五十人程の観客が始まりを待っていた。

私は、少し離れたところに立った。
青空。周りには黄葉したケヤキの木、赤い小粒の実が沢山なる緑葉の木。
ベランダに椅子を並べている親子。布団を取り込んでいる人もいる。

音合わせの音色が響く中、不覚にも涙が出ていた。
人々の思いが目の前に結集している。音を奏でる人々、見守る人々。
丸い。この場に立つことができてよかった。

2曲演奏を聞き、ルパン三世のテーマに見送られながら家路へ急いだ。

帰ると、パートナーがホットケーキを焼いて待っていてくれた。連絡より遅くなったことを詫び、事情を話した。
「遅くなると思って、時間があったからゆっくり焼いてみたよ。お陰でこんなに膨れた。」
厚さ5センチの特大ホットケーキと、ベーコンとキャベツの目玉焼き。
めちゃめちゃ美味しい。

私は幸せものだ。
朝。私は、目の前の私に向かって、一つの問いをなげかけていた。
その答えが、偶然であった吹奏楽と、美味しいホットケーキだった。