わたしを知るもの好きがたり

「わたしを知る」をテーマに自由に書いています。

薔薇の世界をチラ見した    幻想・消費・欲望  

新・ヌースビギナーズラック#010「脱・脱炭素社会」を視聴。幻想の消費、資本主義、欲望というキーワードから、チラッと覗いた薔薇の世界が頭をよぎった。

趣味でバラを10年間育てていた。
元々バラは好きではなかった。近所のおじさんが月に2回、防塵マスクにゴーグルという格好で農薬をバラに撒いていた。見事な花を毎年咲かせていたが、バラは人工的なものというイメージが形成された。

そんなバラ嫌いがなぜハマったのか。
セプタードアイルというイングリッシュローズの蕾を一輪、切り花にして妹がお土産に持たせてくれた。カップ咲きという、丸くコロンとした形で、淡いピンクの可愛らしい品種だ。コップに挿し、飾っていた。翌日、水切りして間も無く、すぐに大きく開き切った。後に知るが、開き切るのが早いのがイングリッシュローズというブランドの特徴でもある。

お昼過ぎ、ふとバラを見て、その姿に驚いた。全ての花弁が反り返って均等に重なり、とてもきれいな模様を描いていた。フラワーオブライフみたいだと思った。しばらく見入っていたが、カメラを取りにその場を離れた。戻るまで20秒も経っていないと思う。なんと花弁は半分落ちていた。なんていう一期一会!ハマった瞬間だった。

それからは育て方の本やカタログ、ロザリアン(バラ愛好家)のブログを漁った。無農薬栽培ができることも知った。ハイブリッドティーという切り花に向き、鉢で育てやすい種類を4品種、接木の大苗で購入した。

バラは一季咲き、四季咲き。つる性、木立性。歴史で見るとオールドローズハイブリッドティーフロリバンダなど様々な分類がある。もちろん原種もある。さらに各ブランド。イングリッシュローズオースチン社のブランド名だ。フランス、日本、個人作家の品種もある。とにかく多種多様だ。

苗の売り方もある。まだ1年経っていない新苗、大苗(二年生苗)、裸苗(大苗を冬に掘り出したもの)。
接木苗は、原種のノイバラなどを台木にして枝を接いで育てたもの。流通する苗は、ほとんどが接木苗だ。逆にブランド品種は種苗法・商標法の関係で接木以外は選べない。自根苗という、挿し木で育ったものも少しある。


ざっとバラの分類を書いたが、ここからが資本主義との絡みだ。
まずバラの品種は膨大だ。色、香りも多種で目移りがする。欲望が刺激され、私もベランダになんとか置ける8鉢まで増やした。途中、癌腫という病気で早期に枯れたりして、のべ12種育てた。新品種は育て方などの情報が少ないので、私は比較的古いものを選んだ。

癌腫。外来の土壌病原菌によるこの病気は、土壌汚染、ハサミによる2次感染で罹患する。不治の病といわれている。キャリアになっても延命する方法もあるらしいが。
「あの店は癌腫が多い」などの噂は絶えない。店というのは販売店を指すのだが、種苗メーカーからの仕入れの時点で感染していたら、店は対策が立てられない。台木のノイバラまで自社生産している生産者兼販売店は少ない。メーカー側の癌腫対策は費用がかかるからだろう、取られていないようだ。鉢バラの寿命は8〜10年と言われているので、癌腫になれば早く次の苗が売れるからじゃないかという、穿った見方もある。

そして流通しているほとんどが接木苗という状況。私は日本の高温多湿の気候には、ノイバラのような日本の原種に接木をしないと育たないから、仕方のないことだと思っていた。これが人間だったら・・などと妄想すると、接木は生理的には受け付けられなくなる。しかし、農業技術として受け入れていた。ところが、いくつかのブログなどを読むと、どうやら生産販売という観点から、急激に成長させる必要があるため接木をする必要があるらしい。効率だ。挿し木で育つ自根苗だと、成長が遅く、もちろん病虫害のリスクもあがる。しかし、その分接木苗に比べると自根苗の方が寿命が伸びるらしい。ただ、自根苗の販売は少ないので、自分で増やす(趣味で増やすならOK)しかない。私は1種類だけ自根苗を購入した。古い品種のティー系のデュセシス・ド・ブラバン(桜鏡)だ。小ぶりな花だが、樹形がとても美しい品種だ。

薔薇の世界も資本主義だと一番痛感したのが、年に一度開かれる「国際バラとガーデニングショー」という新品種の実物も見ることができ、即売もある催し物に行った時だ。薔薇のコンテストもある。妹に頼まれて一度、一緒に行ったことがある(購入した苗などの荷物持ちだ)。
西武ドームの外野席から、お昼ご飯のサンドイッチを頬張りつつ、グラウンドいっぱいに広がる会場を眺めていた。ものすごい熱気だ。資本主義機械が、バラという植物さえも燃料として回っている。西武ドームは風が吹き抜ける。その涼しさと対照的な光景だった。

 

最後に、育てていたバラたちはどうなったか。実はほとんどが枯れてしまった。2020年冬、強剪定を終えた苗を春から予定されていたマンションの大規模修繕に備えて実家に移動した。マンションの中庭は置く場所も狭く、水も部屋から持っていかないといけないので、その選択は断念した。そしてコロナ。ロックダウンを忠実に守る両親から「来なくていいよ」といわれ、バラの管理は母に任せたものの、足が少し悪い母には荷が重かったようだ。それに雨の当たらないマンションと、雨晒しで沢山の虫がいる環境ではバラにも負担だったのだろう。次々と枯れてしまった。
2年遅れで現在工事中だ。今なんとか生きながらえている鉢は2鉢。そのうちの一つが自根苗の桜鏡だ。
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無農薬栽培でもキレイな花を咲かせることはできる。植物は答えてくれる。